「留飲」というのはもともと医学の言葉である。本来の表記は「溜飲」。げっぷや胃液が喉元にこみ上げてくる症状のことである。

そこから生まれた言い回しが、よく見聞きする「留飲が下がる」。

胸のつかえがすっきりするさまを指し、江戸の昔から使われている。

その昔、日本が太平洋戦争に突入したときの新聞や雑誌を見ても、そのオンパレードである。「百年の溜飲、瞬時にして下がる」などと戦果に酔った。あとさきを考えず、世の中もメディアも熱狂したのである。

最近の世論、特にネット空間では、わかりやすい敵をターゲットにして激しくなじる。

こんなことで留飲を下げている風潮を悲しく思うのは私だけであろうか。