8月の日経新聞春秋欄からの引用である。
「熊」は冬の季語である。
「ひぐま」も「つきのわぐま」もしかり。ともに森の奥深くで冬眠しているはずなのになぜ、という疑問がわく。古来、巣にこもったクマを狙う「穴狩り」と呼ばれる狩猟法がある。「熊撃てば、さながら大樹倒れけり」(松根東洋城)。この動物をもっとも身近に感じる季節だったのか。貴重な栄養源だったからかもしれない。春や秋には熊の行動を示す表現が多くみられるが、夏の巻には登場しない。人との距離がうかがえる。
最近は、生息エリア以外に中学校、高齢者施設、ゴルフ場、公園・・・人間の生活圏に悠然と出没し、日常を脅かしている。4~7月で人身被害が55人と多い。自治体に抗議の電話が殺到しているが、「殺すな」以外に「絶滅させろ」も。
保護と駆除のはざまで自治体も苦慮しているようだ。