H・Gウェルズが1898年に発表した「宇宙戦争」は繰り返しドラマや映画になったSFの古典である。人類は火星から来た侵略者の兵器に家畜のようにさらわれ反撃もむなしく絶滅の崖っぷちに追いやられる。

もはやこれまでと思われた人類を救うのは目に見えない病原体です。地球上の生物は共に生きる過程で免疫を獲得しているが、宇宙から来た彼らにはそれがない。それまで無敵だった破壊者は瞬く間に打ち倒されて屍(しかばね)の山に成り果てる。

免疫の要となる抗体の発見は1890年。そして1901年にジフテリアの血清療法が最初のノーベル賞に輝いた。1度かかった病気にかかりにくいことを人は経験則から知っており、免疫という概念も古くからあったらしい。

新型コロナウィルスとの闘いでも最初の武器は免疫で、ワクチンはそれらの力を引き出すだけである。しかし時間が経つと抗体は減り、ウィルスは変異して免疫をかいくぐろうとする。これも実は自然の摂理なのです。共生していくしか方法はないのかも知れません。

 

 

 

テレビ離れがひどい。NHKの「国民生活時間調査2020」が発表され「プレジデントオンライン」が詳細を分析している。

「毎日TVを見る人」は全体の8割を切り、10代・20代のおよそ半数はTVを見なくなった、と。

並行してインターネットの利用率も分析しており、平日にインターネットを利用する人は全世代で45%、このうち16~19才は80%、20代は73%、30代は63%、30代を境に「TVを見る人」との割合が逆転する。70才以上ではTV95%に対しインターネットは20%に過ぎないのです。

極論すれば若い世代はネット、高齢者はTVとなります。

しかし悲観しているばかりではなく、TVという箱では見なくなっているが“映像コンテンツ”の視聴自体は決して落ちていません。スマホでドラマや映画、バラエティーを若い人は見ています。

「TV離れ」は進んでいますが「映像コンテンツ離れ」は進んでいないようです。

 

 

9月4日厚労省から新型コロナの重症化リスクが高いとされる感染者の死亡率についての現状が発表された。

9要因について10万人の感染者の死亡率を調べたところ次のような結果であった。

慢性腎臓病が最も高い13.95%で同病でない人の20倍だった。慢性閉塞性肺疾患(COPD)が10.19%、がん8.35%、糖尿病4.76%、肥満1.55%となった。

また9要因が一つもない人の死亡率は0.41%だったが、一つ以上ある人は全体で2.28%と約5.6倍になった。要因が多いほど死亡率は上がり、1つの人は1.38%、2つなら3.8%、3つは5.2%、4つ以上は9.69%だった。

年代別の死亡率は64才以下では重症者リスク要因がある場合でも0.60%未満だったが、65才以上は6.89%。高齢者の死亡率はインフルエンザ同様、高いことが浮き彫りになりました。

 

片頭痛というのは頭の片側に起こる発作性のズキズキとした痛みで、脳の神経の部分的な炎症により起こると言われています。

発作の前にギザギザした光が見えたりするような前兆が起こることがあり、発作は吐き気などを伴うことがあります。

この片頭痛は実は食事と関係があると言われています。

オメガ6系脂肪酸と呼ばれる成分で、その代表のリノール酸はコーン油などの食物油に多く含まれていて頭痛の引き金になります。

一方、神経の炎症を抑える働きがオメガ3系脂肪酸で、その代表はEPAとDHAです。これらは青魚の油の成分として有名です。

つまりEPAとDHAを増やしリノール酸を減らす食事を摂ることで頭痛が減ってくる、という論文が見られました。御参考までに。

 

 

新型コロナ感染症の昨今、私は毎日、ワクチン接種に追われています。

一方、松山市保健所の委託もあり、コロナ患者さんの自宅療養の方々のオンライン診療を行っています。

最近思うのは、コロナ患者さんと電話を通じて色々な情報が得られることです。現代はメールやアプリで情報だけは入手出来ます。これを使えば「熱は何度?」「咳はある?」等に対し「37.5度」「咳は少々」という返事は入手出来ます。しかし、声を使う電話は文字で伝えきれない優れた特性を持っています。声の力、くぐもり、かすれ、更に咳をしながらの音色からは、その程度から痰の有無、症状までかなりの事がわかります。

またその方が回復期に向かう時は、声のトーンが力強く聞こえます。誰もが不安を抱えている昨今、メールのみで「元気?」ではなくて、身内や大切な友人には、一本、電話をかけてみて下さい。声に触れることは、その心に触れることに通じます。

 

今日は、お辞儀についてです。

マナーデザイナーの岩下宣子さんの書より引用します。

みなさんは、あいさつの際「おはようございます」の言葉を発した後に頭を下げていますか?または、同時に頭を下げますか?

おすすめできないのは言葉と同時に頭を下げるパターンです。せっかく笑顔であいさつしても相手にはあなたの顔が見えず気持ちが届きません。一般的にビジネスの場では言葉が先です。お客様をお迎えする時なども「いらっしゃいませ」と笑顔で言ってから頭を下げる方が多いです。

「言葉の後にお辞儀」は小笠原流礼法だそうです。ソーシャルディスタンスでも心の距離はあけたくないですね。

コロナ下でも丁寧なあいさつを心がけて下さい。

(追伸)

今年の夏は雨のせいで夏らしい行事は釣りくらいでした。

孫達もやって来ましたが、遠出はできませんでした。それでも楽しい時間を過ごすことが出来ました。二人共、すくすく育っています。

夏花火は子供は喜びますね。

イルミネーションメガネは楽しく見えますよ。(3Dですね。)

 

8月19日に芭蕉の痔の話をしました。

海外での偉人の痔疾患を調べると、何と①ルイ14世は痔瘻②ナポレオンは血栓性痔核で悩んだそうです。

今日はナポレオンの話をします。

ナポレオン皇帝は1815年6月18日、46才の時にワーテルローの戦いに敗れ、セント・ヘレナ島に流されその生涯を閉じたのは皆様、歴史で習ったと思います。

さてワーテルローの戦いの2~3日前から血栓性痔核で悩んでいました。辛かったと思います。

かなりこじつけもありますが以下の想像が出来ます。

ナポレオンは「1日に3時間しか寝なかった」と言われています。皇帝かつ軍神というストレスのため夜は遅くまで酒を飲み、脂っこい物を食べて昼に寝るといった乱れた生活を送っていたようで、このような生活習慣は現代人でも痔核の発症原因となります。

規則正しい生活や食事の節制は、どんな病気でも重要だと思います。

 

 

 

私のよく読んだ漫画にはゴルゴ13と並んで手塚治虫の「ブラック・ジャック」がある。

中年以降の人は誰でも知っている名作である。

この天才外科医にあこがれて外科医になった人は私以外にも大勢いる。手塚治虫は大阪大医学部卒の医師であるから尚更であろう。

さてその中から「アナフィラキシー」と題するエピソードを取り上げる。コロナワクチン接種に伴う副作用として今や多くの人が知るワードとなった。

さて主人公は若い軍人。シナイ半島の戦役で重傷を負っている。すぐにでも手術が必要だが、彼は麻酔薬に対するショック症状(アナフィラキシー)があって、これが出来ない。ここで天才外科医のブラック・ジャックが登場する。彼は薬剤を使わずに麻酔をかけ、みごとにこの患者を手術した。しかし若者は、術後の体に自ら麻酔薬を注射してアナフィラキシーを起こさせ自殺してしまう。そうすることで再び戦場に送られて人殺しをするのを回避したのです。

現在、ワクチン接種の賛成派、反対派が居るのは事実で、どちらも強制はされていません。ブラック・ジャックが居たら、このコロナ禍をどう考えたでしょうか。

 

 

今日は芭蕉の持病についてお話します。

それは、切れ痔(裂肛)です。そんな悩みをうたった歌が「奥の細道」にあります。

「持病さへおこりて消入計(きえいるばかり)になん」。

(持病まで起こって苦しみのあまり気を失いそうになった。)

私の外来にも「切れ痔」の方は多く見えます。肛門の出口から2~3㎝の奥までを肛門上皮と呼びますが、そこが傷つき痛みや出血を伴います。多くは硬い便が出るときに傷がつきますが、下痢や柔らかい便でも力んだ時に傷がつきます。

前述の句は芭蕉が旅の途中で持病の激痛に襲われ苦しんでいたとき読んだとされています。

弟子の妙行あてに「持病下血などたびたび、秋旅四国西国もけしからずと、まずおもひとどめ候」と手紙を送っています。

持病の裂肛に悩みながらの2400㎞の奥の細道。

大変だったと察します。

 

 

コロナワクチンへの心理的な距離が一部で縮まっていない。7月に実施した首都圏の20代から60代の3129人への調査では接種に否定的、消極的な人は4割、特に20~30代の女性は6割弱という。

さてワクチンの歴史をひもといていくと、8月3日の日経新聞「春秋」に次のような記事があった。

幕末に上方の医師、緒方洪庵が天然痘を予防する「種痘」へ傾ける情熱が「陽だまりの樹」(手塚治虫原作)の中で詳しく描かれている。

牛痘のウィルスを人に接種したため庶民の間では「打つとウシになる」との根強い迷信があった。

洪庵はウシに乗った神様が病魔を退治する絵を手に人々を説得した。また江戸から来た弟子に自らの苦労を語り、「君には種痘の技術より、いかに種痘を人々に理解させるかを学んでもらわねばならん」と説いた、とある。

往時も今も最先端の成果を前に様子見したり、とまどったりする人間の心のあやは変わっていないようです。

皆様、どうか前向きに理解下さい。

(追伸)

城山ロープウェイに勤めている患者さんから「是非、松山城のライトアップを見に来て下さい。」と誘われ、まだ明るかったですが行って来ました。

「火の鳥」は一番、すばらしかったです。いつ見てもすばらしいイベントです。